山陰をめぐる旅(1)。自意識とともに嘔吐する。38

人口ランキングでワースト1位の鳥取県、2位の島根県。行く機会があり旅をしてきました。果たしてどんな魅力があるのでしょうか。。

姫路から特急スーパーはくとに乗車。智頭線因美線の急こう配を制御付き自然振子式でスイスイと進む。特急列車にはあまり乗車したことがないのでそれだけで楽しい。車窓からの景色はどっからどう見ても田舎。。2時間20分ほど揺られて鳥取駅に到着。

鳥取というと鳥取砂丘というイメージしかなかったが、いざ着いても駅チカでの観光スポットはただそこしかないのではないのではないかと思われるほど何もない。南口には因幡の白兎(古事記に出てくるウサギ、スーパーはくとの由来)の銅像があるが、これを見どころと呼べるほどのものかはわからない。その隣には、文科省唱歌『故郷』が流れる箱がある。作曲家が鳥取出身であるというだけで、これを建て、スーパーはくとのアナウンス音にもなっている。地味だがよい。しかしこれらをここで取り上げるほどに、なにもない。

バスで鳥取砂丘まで。その日は週末だったので観光客でもいるのかと思ったがほぼ無人砂丘の入口から日本海までは歩いて15分くらいか。海の近くには漂流物なのか不法投棄なのかはわからないが、冷蔵庫のような粗大ごみなど適当なごみが散乱している。風紋はほぼ見ることができず、少し曇っていたので日本海に沈む夕陽を臨むこともできなかった。せめて星空をと思っていたところでクリスマス仕様のライトアップが始まる。中途半端な観光地ナイズドでもしなければ集客することができないほどに、知名度とは裏腹に厳しい現実を垣間見た。

二十世紀梨のサワーを飲みながら駅に戻る。ホルモン焼きそばというものが有名らしく食べてみるも予想通りのお味。暇である。鳥取一の歓楽街に行ってみる。フライデーナイトにもかかわらず人がほとんどいない。ちらほらいる客引きは、客がいない以上そのアイデンティティを失い、もはや路上喫煙してるだけの兄ちゃんと化す。ちなみにこのあたりは東京とは異なり受動喫煙対策が進んでいないので、どこでも吸っていいという文化がある。なにしよう。お酒を飲むしかない。現地の人と話してみたいのでスナックに入ってみる。

お客はゼロ。40歳ほどのマダムと、いかにもアルバイトの20歳くらいの方。マダムは中国出身で随分と前より鳥取に住んでいるという。アルバイトの方は専門学校生で、卒業するなり大阪で働きはじめるという。上京したい思いもあるがどこか怖いらしく、そういった近畿・中国・四国地方の学生は大阪に集まる傾向があるようだ。ようするに半端者だが、それはまるで僕が世界を知っているかのようで申し訳ありません。学校を卒業すると地元での雇用が少ないこともありだいたいは都市部に行く。だから若い人は(そもそも街で人をほぼ見かけなかったが)残らず、活気がなく、都市部との格差は広がるばかりである。

しばらくすると50歳くらいのおじちゃんが入店。芸術への造詣が深いかたであり話が盛りあがる。飲みすぎてしまい退店しようとすると、彼から「奢るから」と言っていただき、それからも長々と飲む。彼ほど聡明なかたでさえ、鳥取しか知らないネーチャンに老害をぶちかますのを見て、どこか悲しく、しかし人生の本質に触れられた気がした。限界が来て退店。おじちゃんありがとう。律儀に見えなくなるまで見送ってくれやがる。早々と角を曲がるなり、自意識とともに嘔吐する。

結局、暇だと飲むしかないのである。