かくも儚きE7系・W7系、17
2019年10月13日、金沢駅構内は人がごった返していた。
台風19号の影響で北陸新幹線は12日午後より計画運休、13日になっても運行再開の兆しがまるでない。まもなくして千曲川氾決壊につき長野新幹線車両センターが水没したことが報道された。
被害状況は悲惨であった。E7系とW7系の合わせて10編成が浸水し、被害総額は300億円を超えるという。
前代未聞の被害をもたらすと言われる台風が関東直撃まで差し迫った12日早朝、僕は東京駅にいた。急遽金沢に行かなくてはならなくなり「かがやき501号」に乗り込んだ。
金沢に到着して数時間後に計画運休実施、そしてその後2週間弱、列車が運行することはなかった。
浸水した列車がどれかはわからないが、もしかしたら僕が乗車した列車が運行したのはこれが最後だったのかもしれない。
浸水した10編成はすべて廃車することになった。
北陸新幹線で運行していたのは全30編成。一時、運行本数は大幅に減ったが、現在はE7系へ順次切り替え予定であった上越新幹線から列車を回すことで運行スケジュールを調整している。
これにより上越新幹線のE7系への完全移行は遅れるのはもちろん、大阪までの延伸に遅れがでなければ良いが。。
なぜ北陸新幹線を助けるのは上越新幹線E7系にしかできなかったのか。
地図を見れば分かるとおり、この線路は複数の電力会社を行き来する。
東京電力と東北電力は50Hz,北陸電力と中部電力は60Hzでありいずれの周波数にも対応しなくては運行ができない。専門的なことは詳しくないが、E7系・W7系の車両に手を加えて切り替えられるように施した。
(なお、東海道新幹線は60Hzしか対応しておらず、50Hzの区間には変電所を設けている。)
ようするに、北陸新幹線のルートを走れる列車はE7系・W7系しかこの世界には存在しないのである。
E7系・W7系の歴史は短い。2015年の長野~金沢間の延伸に際し開発された。
ベースとしたのはE5系、東北新幹線で今も運行している列車である。
最高速度は急こう配な路線であることや前述した電源周波数の都合上、抑えなくてはならず、すると電源容量に余裕が生まれ全席にコンセントを設けた。
複雑化していく現代をすいすいと優雅に駆け抜けていく、そんなイメージの列車であった。
しかし自然を前にして、その多くが、あっけなく壊れてしまった。
それでも生き残った列車たちは、死んだ列車の穴を埋めるように、走り続けている。