メガネを新調した、16

 

大阪のとあるメガネ屋でメガネを買い換えました。

こんな弱小ブログにして「記事を書いてもいいですか」と訊けるはずもないので店名は伏せながらも、店員さんのプロフェッショナルさに感銘を受けたので記録していこうと思う。

 

僕が初めてメガネを買ったのはおそらく中学校入学くらいのとき。学校の視力検査のたびに近視が強くなり1年ごとに買い替えていた。

高校生になり視力が悪くなるところまで落ちて、落ち切って、ようやく落ち着いた。もうメガネなしには生活できないほど視力が低下していた。コンタクトを購入してメガネを新調し、あまり困ることはないからと買い替えずに眼科に行くこともなく気づけば7年が経っていた。

 

このときに買ったメガネは、今までの親に言われるがままに銀縁の視力補助としての機能しか果たしていなかったものからは脱却し、友人と大宮の百貨店を回り、あれが良いこれが良いと話し合って決めたファッション性を求めたものだった。

 

f:id:syknid:20191112155257j:plain

 

今までデザインに飽きてきたりで何度も買い替えたくなった。レンズに傷も付いた。しかし重い腰を上げられず。また、ふらりとメガネ屋を見てみても、これだと思えるものがなかった。しかし最近になって下を向くだけでメガネが落ちるようになってきたので、いよいよ新調することに。

 

どうせならいいものを買おうと歩き慣れない道を歩いてたどり着く。店に入るとちょうどお客さんが出ていくところで、すれ違いで入店。お店には40代くらいのお兄さんが一人。早速、話しかけてきた。

 

今使っているメガネを渡すとそそくさとネジを直したり検査機にかざしたりしながらこの店に来た経緯や予算感を訊く。メガネはピンキリであり、1万以内を求めるのであればチェーン店に行くことを強く勧められた。この店では中途半端なものは取り扱かっていない、と。

誰かに映画を勧めてほしいと言われたとき、相手のニーズによりヨーロッパのニッチな映画を言ったり、はたまた『バクマン』と言ったり(言ったことはないが)。ピンキリで回答を変えるであろう。そのとき、自分が本物だと信じている方を言えないのは嫌である。だからこそ、本物を前にして金で妥協するのは嫌で、まだ見ぬ世界を見たく、僕は奮発してこの店で買うことを決めた。

 

しかしそうはいっても現実的な予算もあるのでフレームの選択肢は絞られた。いや、もし予算があっても選択肢はあまり多くはなかった。販売している種類がそこまで多くはないのである。

メニューが多くてどれにしようか迷う飯屋よりも、数種しかなくどれも拘り抜いているほうが再訪してコンプリートしてみたくなったりする。チェーンのメガネ屋ではたくさんあっても気に入るものが一つもなかったが、ここでは一つ一つがすべて魅力的に見え、どれにしても後悔しないように思われた。

 

続いて視力検査。

学校の定期健診レベルはあくまで視力を測るものであり目のすべてを診られてはいない。僕は利き目である左目のみを酷使しており右目はあまり機能していない。わりと強めの乱視であることが判明した。

医者だと乱視用のレンズも入れる。しかし僕は乱視は要らないと思う。なぜなら君は若いから。目の筋肉で問題なく見られる。むしろ慣れないものを必要のないうちにかけるほうが負担である。そう言われ、変わらず近視のレンズを、右目の度を少し強めてオーダーメイドしてもらうことになった。

 

店主は関西ならではのジョークを交えて説得力のある言葉で僕を信頼させた。素晴らしい接客であるが、それにとどまらず、しきりに僕の生活を訊いてきた。最低限の視力を確保することは簡単でも、具体的に何を見たいのかによりレンズ選定は変わる。ようするにメガネのコンシェルジュである。

たとえば映画の撮影において、何を撮影するかと同時にその意図はなんなのかを理解しなければレンズは決められない。メガネもまた、用途に沿った選択をしなければ効果を最大限に発揮することはできないのであろう。

 

チェーンのメガネ屋がそんなことを考えもせずに安いメガネを売っている現状を横目に、真実はここにあると信じてここまでやってきたのかもしれない、と想像してみた。違うかもしれないけれど。

業種が違えど、なんとなくシンパシーを感じた。

 

プロフェッショナルになりたいと思った。